六ヶ所村再処理施設とは?

六ヶ所村核燃料再処理施設

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 転載2007.12.31現在

トリチウム放出部分、「美浜の会」HP
六ヶ所再処理工場からの放射能の海洋放出
すさまじい10月のトリチウム放出 (2007/12/03)
から転載
2008.3.16追加

六ヶ所村核燃料再処理施設 (ろっかしょむらかくねんりょうさいしょりしせつ) は全国9つの電力会社により設立された日本原燃の所有する核燃料再処理工場。

1993年から約2兆1,900億円の費用をかけて青森県上北郡六ヶ所村弥栄平地区に建設が進められている。2008年に操業開始予定。

概要

日本全国の原子力発電所(原発)で燃やされた使用済み核燃料を集め、その中から核燃料のウランとプルトニウムを取り出す再処理工場である。最大処理能力はウラン800トン/年、使用済燃料貯蔵容量はウラン3,000トン。2008年2月の本格稼動を予定して、2007年12月現在はアクティブ試験という試運転を行っている。本格稼動した場合に、この再処理工場から空と海に放出される「放射能」(放射能量のことと思われる)は1日分で原発1年分になるという主張もある。ただし、原燃の計算を信じるならば、周辺住民の一人あたりの年間被曝量は国の規準を大幅に下回っており、問題無いとされる。

茨城県東海村に日本原子力研究開発機構が所有する再処理工場(東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所 最大処理能力:ウラン210トン/年)を置換する施設とされ、青森県六ヶ所村の敷地内にはウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターが併設して建設されている。今後 MOX燃料工場の建設も予定されており、 核燃料サイクルのための核燃料コンビナートを形成する。

運営

2006年3月31日に日本原燃は六ヶ所村に隣接する三沢市など合計5市町村とアクティブ試験についての安全協定を締結した。同日中に開始されたアクティブ試験(試運転)では、17ヶ月をかけて本物の使用済核燃料からプルトニウムを抽出し、施設の安全性および環境へ放出される放射性物質の量を確認する。430トンを処理して4トン前後のプルトニウムを抽出する予定。

放出される放射性物質

この施設から放出される放射性物質は以下の通りである。括弧内は半減期。国や原燃は、これらの多くは大気や海水によって希釈されるので人体に影響が出るレベルの線量にはならないとの立場を取っている。一方、本施設に反対する立場の人々は、こうした説明を受け入れていない[3]。また殆どの放射性物質は生物濃縮されないが、ヨウ素129のみ海藻に蓄積される為、三陸沖の海藻が放射性物質によって汚染されるのではないかと考える者も居る。

気体での放出

  • クリプトン85(10.7年・生物濃縮無し)
  • トリチウム(12.33年・生物濃縮無し)
  • 炭素14(5715年・生物濃縮無し)
  • ヨウ素129(約1570万年・生物濃縮有り)
  • ヨウ素131(8日間・生物濃縮は理論上はあり得るが半減期が非常に短い為、現実には考慮不要)

液体での放出

  • トリチウム(12.33年)
  • ヨウ素129(約1570万年)
  • ヨウ素131(8日間)

反対運動

本施設は反原発運動の中でも特に激しい反対運動の対象となっており、以下のような活動が展開されている。

  • 音楽家の坂本龍一による、主にポピュラー文化商品の製作者を中心とした反対運動「STOP ROKKASHO」
  • 反原発論者で、本施設にも反対の立場である鎌仲ひとみが「中立の立場で」制作したとする映画「六ヶ所村ラプソディー」。この映画は各地で反原発の立場の論者の講演会とセットになった自主上映会が開催されている。代表的な講演者は鎌仲ひとみ、田中優である。
  • 様々な市民運動に関わっている活動家の田中優による講演会。
  • 国際的環境保護団体グリーンピース (NGO)による反対運動。
  • 岩手県の住民団体、漁民、サーファーらによる9万人強の反対署名。
  • TEAM GO GOによるフリーペーパー「豪快な号外」。

また、参議院議員の川田龍平は上記の反対署名を受ける形で、2007年11月27日の参議院環境委員会において、この問題についての質問を行った。

主な論点

反対運動の主な主張とそれに対する反論は以下のようなものである。なお、これらの主張は必ずしも科学的に実証された主張ではなく、論争の最中であることに注意されたし。

「再処理工場からの放射能は1日で原発1年分」

反対運動をしている人々は、本施設が1日に排出する「放射能」は、原子力発電所が1年間に排出する「放射能」と同じくらいに多いので、本施設の稼働は中止すべきだと主張している。一方、これについて電気事業連合会は、そもそも日本の原子力発電所が1年間に排出する放射性物質は極めて少ないし、人体あたりの年間被曝量で計算すると約0.022ミリシーベルトとなり、日本国内での自然放射線量の地域差(最大で年間0.4ミリシーベルト)以下であると反論している。また、実際には本施設が本格稼働した際に1日に排出する放射性物質の放射線量は、通常の原発の170倍程度であり、1年分という数字には誇張が含まれている。

「イギリスやフランスの再処理工場周辺では白血病が増えている」

同じく、イギリス(セラフィールド)やフランス(ラ・アーグ)の再処理施設周辺では、小児白血病が増えている。つまり再処理施設周辺では小児白血病が増えるということなので、再処理施設は不要であるという指摘がある。これについては、セラフィールドやラ・アーグ周辺の白血病についてはイギリス、フランスの政府機関が調査を行い、白血病の発症率が有意に高いことが明らかとなったが 、再処理施設は他にも多数存在するし、原子力関連施設との関係を示す証拠も見つかっていないという原燃の反論がある。

「六ヶ所村で製造されるプルトニウムは使い道が無い」

福島県や新潟県は再処理施設で製造されるプルトニウムを用いたプルサーマル発電を拒否しているし、高速増殖炉も計画が難航しているので、プルサーマル発電は日本国内では実施出来ない。よって再処理施設も不要であるとの指摘が提出されている。一方、これについては平成24年以降に軽水炉でMOX燃料として使用する予定であるし、2006年には佐賀県の九州電力・玄海原子力発電所3号機でプルサーマル発電を行う計画が、地元自治体に了承されているとの反論もある。

「再処理工場から海中に放出される放射能が三陸の海産物を汚染する」

前述の田中優は、再処理施設が海中に放出する放射性物質は太平洋には拡散せず、親潮に乗って三陸沖の漁場に滞留し、生物濃縮によって魚介類に蓄積するので、再処理施設の稼働は中止すべきであると主張している(前出動画資料参照)。これに対し、原燃の計算より高めの濃縮係数で計算しても、再処理工場から放出される放射性物質による被曝量は微々たるものという指摘がある。

「再処理工場が年間に海に放出する放射能は、47000人分の致死量相当」

同じく田中優は、再処理施設が海中に放出する放射性物質が年間で47000人分の致死量にもなり、しかもこれは太平洋には拡散せずに海流の影響で三陸から関東の沿岸に滞留すると指摘している(前出動画資料参照)。この計算の根拠は「六ヶ所村核燃料再処理施設が年間で放出する放射性物質の放射線量を合計すると330000000mSV」であり、人間が短時間に被曝した場合まず間違いなく即死するとされる放射線量である7000mSVでこれを除した数字が47142.857142857145となるからであると推測される。

これについては、放出直後に十分に希釈されるし、大半は人体への影響を及ぼしにくいトリチウムの形での放出なので、リスクの過大評価であるとの反論がある。

「プルトニウムは角砂糖5個分で日本が全滅する猛毒である。」

プルトニウムの毒性は既知の毒物の中でも最悪レベルで、「角砂糖5個分で日本が全滅」するものであるという指摘がある。これについては、電気事業連合会による、事実誤認であるとの反論がある。詳細は、プルトニウムの記事を参照のこと。

「再処理事業は過大な費用がかかるので中止すべきである」

脱原発の立場にあるウェブサイト原子力資料情報室などは、本施設の建設・維持にかかる費用が過大であり、また当初示されていた費用を遙かに超えていることを問題視し、最終的に国民の支払う電気料金が押し上げられると指摘している。一方、再処理工場の稼働を中止すれば最終的な負担は大幅に軽減出来るとし、再処理工場の稼働を中止するよう求めている。これについて日本原燃は、費用の額について直接はコメントしていないが、日本のエネルギー面での安全保障を考えた時に、ウランを代替しうる核燃料としてのプルトニウムは必要であることが、国家の長期政策として決定されていると回答している。

また原子力資料情報室は、電気事業連合会の試算が稼働率100%を前提としているので、実際の費用はこの試算より必ず増えるとも主張している(前出資料参照)。これについて電気事業連合会は、稼働率は定格を前提として試算されており、定格より5%稼働率が上がった場合は、それによって増える分の再処理費用をそれによって減る分の中間貯蔵費用・ウラン代が上回る為、全体では300億円の費用減、また稼働率が5%下がった場合には500億円の費用増になるとの試算を示している。

その他の批判意見

  • 再処理によってプルトニウムを抽出すると、逆に低レベル廃棄物は増えるので、再処理施設は不要である(原子力資料情報室など)。
  • 六ヶ所村の施設は技術的には可能であるクリプトン85の除去装置を政治的・コスト上の理由から設置していない。これは排出される放射性物質を可能な限り除去するという原燃の主張を裏切るものである。

六ヶ所再処理工場からの放射能の海洋放出
すさまじい2007年10月のトリチウム放出

  • 10月2日は、原発の濃度限度の約2800倍
    10月は3日に1回の放出、これまでで最高の523兆ベクレル放出

     今年10月2日に海洋放出されたトリチウムの濃度は、原発などの濃度限度の約2800倍もあった。これまで最大濃度は濃度限度の約1400倍(昨年11月18日で)なので、一気に2倍にも跳ね上がったことになる。10月全体では10回(3日に1回)の放出で、1ヶ月間の放出量は約523兆ベクレルでこれまでで最大の放出量。昨年11月放出量の約2.3倍になっている(グラフ参照)。本格運転が始まると、この10月2日の放出(99兆ベクレル)が1日おきに実施されることになるのだ。

    続きは、美浜の会HPをご覧ください。
    日本原燃のHPで公表されている数値をグラフ化したものが掲載されています。

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